サリンジャー
とにかくまいっちゃうんだな、これが。
何がって、突然のさよならとか
そんなたぐいの奴にさ。
そりゃやっこさんにも理由(それも・・・人に言えないたぐいの奴)は
あるだろうけれどさ。
好きな女の子に面と向かって「好きだ」なんてインチキ言えるかい?
これはそんな問題と同じ話さ。
オタンコナスのお前さんでもその位の事わかるだろう?
わからないってのがわからないよ
やっこさんに初めて会った時の事とか
いちいちおぼえているたぐいの話じゃないさ
いや、本当はおぼえていたとしてもだ。
いまここでそれを言うのは
インチキだよ
あったかどうか忘れちまったけど
何か教訓めいた事を
教えてもらわなかった訳ではないよね
『神に誓って』だったか
『太ったおばさま』だったか
・・・・・・・えい
ちくしょうめ!
さよならなんて言えないよ。
寂しくなっちまうよ。
- 作者: J.D.サリンジャー,野崎孝
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1984/05/20
- メディア: 新書
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